【有馬記念回顧】大波乱もたらした「二人のジョッキー」 “不運続き”と“死に枠”の馬を導いた好プレー

佐藤直文 レース回顧
有馬記念

風雲急を告げた最終決戦で盤石の競馬 レガレイラが1年ぶりの大仕事

 隊列こそ想定された並びとは違っていたものの、前半1000m通過ラップは62秒9という予想以上の超スローペース。3コーナー手前からようやくペースが上がったとはいえ、そこまでのポジショニングが勝負の明暗を分けたと言える。

 レガレイラ。スタートをポンと出て好位でスムーズに折り合いを付ける今までない形での運び。勝負どころからもロスなくポジションを上げる盤石の競馬で、先に動いて脚を伸ばした2着馬との追い比べを制した。3歳となってからはなかなか期待通りの走りができなかったが、ようやく本来の力を発揮できたのは、修正を重ねてきた陣営の力とテン乗りながら自然体で導いた戸崎騎手の巧みな騎乗ゆえのこと。お見事と言うしかない。

レガレイラ

叩き合いを制したレガレイラ(青帽)が、64年ぶりの3歳牝馬Vを果たした

 2着シャフリヤールは、大外枠から序盤は中団後ろあたりの追走だったが、スローペースを利してポジションを上げた、これまた鞍上の好プレーにも助けられ、一旦は抜け出したかに思えたハナ差惜敗。大外枠に入った馬の2年連続の好走で、もう死に枠とは言えないかもしれない。

 3着ダノンデサイルは、前走と同じ轍を踏むわけにはいかないだけに、最内枠からの逃げも驚けなかった。ただ、マイペースに持ち込んだとはいえ、完全に瞬発力勝負となってしまってのこの結果も、仕方ないだろう。

 4着ベラジオオペラは、流れも含めて2番手から理想的な競馬ができたはずだが、結果的には逃げた馬も交せなかった。これまた瞬発力勝負となっては分が悪いだけに、もうひと工夫欲しかったところ。

 5着ジャスティンパレスは、勝負どころで動けぬポジション。直線で内をついて伸びを見せたが、勝負になる位置取りではなかった。

 アーバンシックは、内枠での出遅れ。その後に挽回して道中は勝ち馬を前に見るポジションで運べたとはいえ、やりたい競馬ができない状況だったことも確かだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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