まさに人馬一体の追い込み 大野サウンドトゥルーが強襲V

佐藤直文 レース回顧
チャンピオンズカップ

無傷の王者をノックアウト 豪脚一閃サウンドトゥルー

 タガノトネール、ホッコータルマエといった強力な先行勢の直前リタイアにより、スローペースも予想されてはいたが、ハナを奪ったモンドクラッセに途中からコパノリッキーが勝負を挑む形で、淀みないペースとなった。3コーナー過ぎの勝負どころでは、ゴールドドリームが外を回って仕掛け、さらにその外からアウォーディーが進出し、4コーナーでは上位グループと下位グループが分かれる珍しい形となったが、ラスト1ハロンが13秒0という厳しいレースラップは、まさに追い込み馬の流れだったと言える。

 サウンドトゥルーは、この厳しい流れで置かれ気味の後方追走となったが、自分のペースを守って直線を向いたもの。ここまでは3着だった昨年と全く同じ競馬であったが、昨年はそこから馬群の大外へ持ち出すロスがあったのに対し、今年は馬群がバラけたことにより、スムーズに捌くことができた。手綱を取り続ける大野騎手との呼吸もピタリで、まさに人馬一体の追い込みがものの見事にハマッた形だ。4歳夏の去勢を境にぐんぐん成長した馬でもあるが、去勢馬は時間をかけて完成するパターンも多く、この馬も今が最盛期かもしれない。しかも長く力を維持できるのもセン馬の特徴であり、来年以降もダート中距離界の顔として活躍できるはずだ。

サウンドトゥルー

アウォーディー(黒帽)をゴール直前で捉えたサウンドトゥルー(黄帽)が優勝(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着アウォーディーは、コーナーで気難しさを見せるなど、まだ気性面の課題がある印象。それでも、今日の厳しい流れの中で、前を力で捻じ伏せた内容は、負けて強しであった。最後は抜け出してソラを使う悪癖も出たのだろうが、負けるとすればこのパターンだったろう。前身のJCダートを含めて、過去10年でJBCクラシックとの連覇は07年のヴァーミリアンだけしかなく、激走後の中3週での体調維持も難しかったはず。プラス10キロの馬体重から、そのあたりの影響もあっただろうか。

 3着アスカノロマンは、このペースで先行して最後までしっかりと脚を伸ばしたのだから、これまた負けて強しであった。人気を落とす要因でもあった前走の大敗は太目残りと判断でき、そこからマイナス10キロの体に戻せたことで本来の力を発揮したと言えるが、逃げての好走もあるとはいえ、今日の競馬を見ると控えて差す競馬の方がいいのではないかと思えた。

 4着カフジテイクは、4コーナーでは勝ち馬とほぼ同じ位置取りであったが、そこから大外へ。前述した“勝ち馬の昨年の競馬”になってしまった感を受けるが、このメンバーと距離でこれだけ走れば立派である。4歳という年齢を考えても、まだこれからの馬であり、いずれはタイトルを取っても不思議はない潜在能力の持ち主だ。

 5着アポロケンタッキーは、直線で追われてからジリジリとしか伸びなかった。追っつけながらの後方追走で、脚が十分に溜まらなかった印象も受けるが、これまたまだ4歳であり、これからの馬だろう。

 ノンコノユメは、ムーア騎手らしく促し気味での追走だったが、本来の爆発力は見られなかった。去勢後2戦目の競馬であったが、その効果が表れるにはあと数戦必要かもしれない。ゴールドドリームは出遅れを挽回するべく積極的に動いて行く形となったが、結果論ではあるが今日の流れでは後方で脚を溜める方が良かったか。この敗戦が先々に繋がることを期待したい。コパノリッキーは、この馬としてはけっしてオーバーペースではなかったはずで、過去のこのレースでの結果を考えても中京コースが合わないと見るべきだ。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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