泣く子とミルコには逆らえぬ またしても神懸かり騎乗でペルシアンナイト

佐藤直文 レース回顧
マイルCS

鞍上の腕で不利なデータを粉砕 ペルシアンナイト

 朝の重発表から午後には稍重になったとはいえ、その後も小雨が降るなど、イメージほど馬場は回復してはいなかった印象。特に直線でインを走るのはちょっとしんどい馬場であり、かと言って全体に荒れた馬場で大外を回るのもロスが大きい。そういう状況で取るべき進路をどう見つけるか。上位の力差は紙一重と思えた一戦で勝負を分けたのは、鞍上のまさに神懸かりなコース取りであった。

 ペルシアンナイトは、このレースではけっして有利ではない大外枠をどう克服するかも鍵であったが、ミルコ・デムーロ騎手はスタートしてすぐに下げる大胆な策を取り、後方でロスのない立ち回り。早目に好位に進出した皐月賞とは違い脚を溜めたまま直線を向いたところで、一旦は開いたインに入れる素振りを見せながらも、躊躇なく外目に馬を持ち出し、あとはブレーキを踏むことなく見事に馬群を捌き切った。少し時計のかかる今日のような馬場もこの馬には合っていたと言えるが、やはり最大の勝因は鞍上の腕。このレースでは劣勢の3歳馬を敢えて選んで騎乗したこと自体も、この馬の素材に魅力を感じていたからこそだろうが、それにしてもキッチリと結果を出すとは。今週もまた、恐れ入った。

ペルシアンナイト

17年ぶりの3歳馬によるマイルCS制覇を成し遂げたペルシアンナイト(桃帽)(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着エアスピネルは、この馬にとってもピッタリの馬場だったと言えるが、中団の絶好のポジションからこれまたほぼ完璧に近いレースぶりだった。これでハナ差負けというのは勝負のアヤ、というレベルであり、力は示す走り。今後もマイル戦線の中心として活躍できるだろう。

 3着サングレーザーは、道中は2着馬の直後で運び、これまた直線でうまく馬群を捌くことができたが、ほぼ100点満点の立ち回りだった上位2頭と比べると、やや劣ったか。ただ、馬の能力自体は互角のレベルだったと言える。

 4着レーヌミノルは、好位で流れに乗る形で、直線でも2着馬に渋太く食い下がったもの。自身を含めて3歳馬が3頭掲示板に載ったことは、マイル路線でのこの世代のレベルの高さを示したと言える。

 5着イスラボニータは、位置取りとしてはけっして悪くはなかったが、下を気にしての走り。やはりパンパンの良馬場でこその馬だが、衰えとは言わないまでも年齢的に過去2回以上の走りを望むのも酷だったか。

 レッドファルクスは、直線で外へ持ち出すスペースがなく馬場の悪いところを走らされたのが痛かったが、基本的にマイルは長いのだろう。安田記念のように道中で脚が溜まる形ならこなせても、今日のように流れに乗る形では距離適性の差が出てしまったように思う。サトノアラジンは、一滴でも雨が降ればダメという馬ではあるが、後方から大外を回る形で届く質の競馬でもなかった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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