名手が引き出した怒涛の鬼脚 ゴールドドリームここに復活

佐藤直文 レース回顧
チャンピオンズカップ

馬を動かすムーアの技術 ゴールドドリーム

 紙面のコラムでも触れたが、中京1800mダートは何よりペースの読みが大切で、このコースでの施行となった過去3年を振り返ってみても、前半1000mが62秒3のスローだった3年前が先行・好位勢の決着、対して差し・追込勢の台頭となったここ2年は60秒2と60秒6だった。今年はどの馬が逃げるにしても、そう速いペースにはならないと判断して、◎はテイエムジンソクに。1000mを61秒6で通過した時点で“これは勝った”と思ったのだが…。

 ゴールドドリームは、中間にゲート練習だけでなく、従順になる効果を期待してのプール調教も取り入れていたが、そのぶんコースでの調教量が減ってのプラス14キロの馬体は、正直、少し重いと言えた。肝心のスタートもあまり良くはなかったが、大敗した昨年と大きく違っていたのは道中で折り合ってリズム良く走れていたこと。直線を向いて追い出されてから即座に反応しなかったのは重目残りの影響だったかもしれないが、楽をしていた前が止まらない中で、残り1ハロンから使った脚はまさに鬼脚だった。もちろん能力あってのものだが、この脚を使わせたムーア騎手の馬を動かす技術もまた凄いと言わざるを得ない。

ゴールドドリーム

最後に鬼脚を使ったゴールドドリームがGI2勝目をあげた(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着テイエムジンソクは、先行馬には厳しい外枠だったが、内の馬を見ながら最初のコーナーでスッと2番手に収まった。道中の緩い流れは古川騎手も体感できていたはずで、直線でも前を交わせば勝てると思ったであろう。自分の競馬をしてゴール前でキッチリと捉え切ったのに、まさか勝ち馬にあんな脚を使われるとは。しょうがないと思える2着であった。

 3着コパノリッキーは、最内枠を利してハナへ行ったが、1200m戦を使った後でも掛かることなくスムーズに折り合えていた。過去3回は全く結果が出なかったレースだが、けっしてコースが合わないわけではなく、自分の競馬ができればこのくらいは走れる馬。田辺騎手もよくそのことをわかっていての好騎乗と言えたし、中央でのラストランを勝利で飾ることはできなかったが、歴史に名を残すにふさわしい馬である。

 4着ケイティブレイブは、好位から運んで前を交わせず、というレースぶりは、ペースを考えても残念な内容。ただ、この馬の勝ちパターンは、思い切ってハナへ行くか、出遅れて脚が溜まったことで豪快な追い込みを決めた帝王賞のような、極端な競馬ではないかと思える。鞍上もそれはわかっているはずで、もっと大胆さが必要だったのではないだろうか。

 5着アウォーディーは、昨年と同じような位置取りで、この馬の競馬はできたように思えるが、昨年以上に速い上がりが要求される流れではここまでだったか。状態自体は戻っていたように見えたが、年齢的な衰えも少なからずあるのだろう。

 サウンドトゥルーも、状態は申し分ないと言えた。ただ、今日の流れでは出番がなかったのも仕方ないと思える一方、昨年のように直線でスムーズに外へ持ち出せなかったのも確か。コンマ6秒差なら着順ほど大きく負けたわけではなく、大きく評価の下がる一戦ではないだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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