断然人気に応えたキタサンタのプレゼント ラストもまつりで大団円

佐藤直文 レース回顧
有馬記念

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陣営の仕上げも見事 キタサンブラック

 引退レースで有終の美を飾る大団円決着となった有馬記念だが、絶好枠から先手を取ってスローのマイペースで運んだキタサンブラックの首に、誰も鈴を付けに行かない展開では、至極順当な勝利だったように思う。見ようによっては、2番手で運んだシャケトラが勝負を挑んだように映ったかもしれないが、並びかけるシーンが4角手前では明らかに手遅れで、むしろそこまでシャケトラが蓋となって後続が動けなかった感すら受けた。もちろん、ラストランを歴代の名馬に並ぶGI7勝目で飾ったキタサンの偉業と功績には、改めて敬服する外はない。

 キタサンブラックの武豊騎手は、昨年こそマルターズアポジーに先を譲ったが、今年のメンバーと枠順を考えれば、普通にスタートが切れればハナへ、というのも当初の作戦通りだったことだろう。たとえ何かに突つかれても、逆に後続に脚を使わせる逃げが打てる馬であり、ましてレース中盤で13秒台のラップが2度続くペースに落とせたのなら、完勝となったのも当然である。加えて、これまで鬼門であった“叩き3走目”へ向けて、しっかりとケアをして力を出し切れる状態に持ってきた陣営の仕上げも見事であった。

キタサンブラック

悠々とラストランを飾ったキタサンブラック(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着クイーンズリングは、これまた絶好枠から難なく好位に収まって、器用に立ち回った。けっして2500mが守備範囲とは言えない馬だが、スローペースと鞍上のソツのない完璧な運びにより、熾烈な2着争いを制することができたように思う。

 3着シュヴァルグランは、やはり小回りの中山では少し反応に遅れるところも見せて、結果、ゴチャついた直線半ばで接触する不利も受けたが、そこからもう一度伸びたあたりが力の証だろう。6歳となる来年も、まだ強くなる可能性すらある。

 4着スワーヴリチャードは、勝負どころから外を回る厳しい形となったことで、最後の最後に伸び負けたもの。ただ、直線では内にモタれていたあたり、いかにも完成途上の感を受け、これからもっと良くなる馬だろう。

 5着ルージュバックは、とにかく状態だけなら近走で一番の感を受けたが、道中最後方からではここまでが精一杯だった。

 サトノクラウンも、前走のJC時よりは状態も戻っているように見えたが、さらに着順を落とすとは…。勝負どころから一気にペースアップする流れの競馬は合わないのだろうが、ここまで負けるのは気持ちの面に問題があったとしか思えない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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