渾身の一差しでファインニードル スプリント路線を牽引する存在に

佐藤直文 レース回顧
高松宮記念

GIの舞台に映えたロイヤルブルー ファインニードル

 激しい先行争いでテンの3ハロンは33秒3というラップだったが、前崩れとなるほどの速さではなく、好位で流れに乗って運んだ馬が上位を占める形となった。特に上位3頭は馬場の内外の差こそあれ、ほとんど同じ位置での競馬。それより前では厳しく、後ろからでは届かない中で絶好のポジションだったように思う。

 ファインニードルは、外から行きたい馬を行かせた上で、内の先行争いを見ながら絶好位をキープ。その上位3頭の中で一番外を回る形だったが、直線で馬場のいい外目へスムーズに持ち出せたことにより、ゴール前の追い比べを制すことができた。ここ一年、変わり映えのしなかったスプリント界の勢力図の中で、昨年の夏を境に最も心身ともに成長してきた馬であり、年齢を重ねても長く活躍できるアドマイヤムーン産駒だけに、今後もスプリント路線を牽引する存在となるであろう。

ファインニードル

レッツゴードンキを僅差で差し切ったファインニードル(黄帽)(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着レッツゴードンキは、これ以上なくソツのない鞍上のレース運びで、桜花賞以来のタイトルを掴んだと思えたところで勝ち馬の強襲に屈したもの。これで国内のスプリントGIは3戦連続での2着で、今回もハナ差なら運だけのレベルと言えるのだが、好走したとはいえあまり意図が見えない前走のダート使いなど、その運を手放す要因かとも思える。

 3着ナックビーナスは、これまたソツなく乗られたことが好走の最大の因だが、GIでも戦えるレベルの力を付けていることも確かだった。まだ1分7秒台の高速決着への対応は厳しそうだが、8秒台の決着なら重賞はいつでも勝てる。

 4着ダンスディレクターは、上位3頭よりは後ろの位置取りだったが、ロスなくインを回り、直線でも開いた内をすくって伸びたもの。今日の流れでは厳しいポジションだったことを考えれば届かなかったのも仕方はなく、この馬なりに力は出し切れたと思う。

 5着ブリザードは、上位馬より一つ前のポジションで自分の競馬ができていた。直線を向いてのコース取りもさすがは香港の名手らしい巧さであったが、今日の決着でもまだ時計が速すぎたか。加えて、初の左回りの影響も多分にあったろう。

 レッドファルクスは、流れに乗ることができなかったとはいえ、いくら何でも位置取りが悪過ぎた。上がりはメンバー唯一の33秒台をマークしていたあたり、状態面に問題はなかったと思えるが、4コーナーまでにポジションを上げられなかったのはミルコらしからぬ騎乗だった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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