強いまま「別れ」告げる グランアレグリアとルメールの“理想的な競馬”

佐藤直文 レース回顧
マイルCS

中2週への懸念もなんの グランアレグリアが有終の美

 コース内側の傷みも進み、含水量の関係で先週よりは速い時計が出たものの、やはり内よりも外が伸びる馬場状態。前半3ハロン35秒6というスローな流れでは、極端に外を回るのは致命的だが、道中ロスなく運んで勝負どころから外へ、というのが理想的な競馬だ。悔いを残したくないラストランで、まさにその競馬ができた勝ち馬は、強かったと同時に鞍上もまた最高の騎乗だったように思う。

 そのグランアレグリア。ポジションはペースを考えると、少し後ろ過ぎたかもしれないが、いつでも外へ持ち出せる位置で余裕を持って追走できていた。直線を向いて一気に前を捉えた脚は、これで引退するのがもったいないと思えるほどの強さだった。春の安田記念と同じ中2週が懸念されたが、夏にノドの手術を施したことにより、この中間もしっかりと負荷をかけられており、本来の走りができる状態だったと見ていい。これだけ条件が揃えば、着差以上の完勝にも納得が行く。

グランアレグリアとルメール

グランアレグリアを勝利に導き歓喜の雄叫びをあげる鞍上のルメール

 2着シュネルマイスターは、内枠から包まれながらの追走は、ロスこそなかったがけっして楽ではなかった。直線でも最後の最後にスペースを見つけてよく伸びたが、戦前に描いていた競馬ではなかっただろう。距離も本来は1800mあたりがベストかもしれない。

 3着ダノンザキッドは、外枠からスムーズなレース運びで、直線でも一気に抜けた勝ち馬によく食い下がっていた。久々を使われてグンと良くなっていたことも確かだが、マイルはまだ2戦目でこれだけ走ったのだから、能力は証明できたはずだ。

 4着インディチャンプは、ロスのない立ち回りで最後まで2着争いに加わっていたが、最後は6歳という年齢的な差が出たか。

 5着ホウオウアマゾンは、マイペースで行けたとはいえ、このメンバーで掲示板に踏み止まったのは、相当力を付けている証拠。3歳世代のレベルの高さも証明したと言える。

 サリオスは、ブリンカーの効果で行きっぷりが良くなったものの、逃げた馬を交わせないようでは完全復活にはほど遠いだろう。1週前の追い切りは確かに凄かったが、輸送を経てのプラス10キロというのは何らかの調整の狂いもあったのではないか。グレナディアガーズは、力みもあったとはいえ、全くらしさが見られぬ走り。体調面にも問題があったと言えるだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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