若手の原優介騎手を大きく成長させた「かけがえのない1勝」とは
土曜日の新潟10R胎内川特別に出走するトーセンメラニー(美浦:小桧山厩舎)。ここまでのキャリア20戦中15戦で手綱を取ってきたのが、小桧山厩舎の所属である原優介騎手。戦歴を見ての通り2、3着がそれぞれ5回もあり勝ち切れない一面のある馬だが、そのほとんどを共に経験してきた戦友との絆について綴ってみたい。(美浦:久光匡治TM)
デビュー2戦目で初めて騎乗し3着。4戦目からは6戦連続で騎乗するも2着は3回あったが勝ち切れなかった。「負けた相手も強かったですし、いつでも勝てる能力は感じていました。でも勝てず、どう乗るか常に緊張していた気がします」と当時を振り返る原騎手。継続騎乗はそこで途切れ、結局初勝利を挙げたのは乗り替わり2戦目の武豊騎手だった。「悔しい気持ちもあってか“うまく内が開いた”、“運が良かった”と失礼ながらそんな風に思っていました…」
字面の上では勝たせられずの乗り替わりで他騎手が勝った馬。もちろん斤量面などの関係もあるだろうが、意外にも昇級してから手綱が再び戻ってきた。この辺りは師匠である小桧山調教師の懐の深さ。普段から多くを語る師匠ではないが、原騎手に戻す道筋は労力の要ることだったと想像に難くない。
「また乗れる喜びの感情と共に、期待に応えたいという緊張感が戻ってきました」
そう語る原騎手だったが、昇級初戦は2着と気を吐いたものの、以降も結果が出せず悩む日々が続く。そして悩みながら二桁着順を続けたのち、転機となったのが2走前の4着だった中京でのレース。
「初距離だったこともあり、いたずらに動かず終いに賭けようと腹を括ったら凄く伸びてくれて、一種の閃きのようなものを感じました」
この経験が次走で即結果に繋がる。
「距離短縮でしたが、自信を持って乗りました。ゴール前きっちり届いた瞬間はとにかく嬉しくて、思わずガッツポーズをしてしまいました(苦笑)」
実に15戦目の騎乗で初めてもぎ取った人馬での1着。紆余曲折を経てのものだけに、その喜びもひとしおだっただろう。
「今は未勝利を勝ったのが、“運が良かった”とは思いません。勝ちたい気持ちがあったにせよ、自分は要所要所で騎乗に無駄があった。豊さんの騎乗が、あの終いの脚と、開いた進路を突ける余裕を生んだのだと、今では理解できます」と原騎手。
ガッツポーズの件を「恥ずかしいから平場であんなことするなよなぁ」と語っていた小桧山師の嬉しそうな笑顔は内緒の話だ。
ー人と馬、そして人と人、分厚い信頼で挑む昇級初戦が非常に楽しみー
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