余裕仕上げ、トップハンデものかは 地力発揮シュヴァルグランが完勝

佐藤直文 レース回顧
アルゼンチン共和国杯

着差以上の完勝で シュヴァルグランが出世街道のチケットを

 確たる逃げ馬が不在のメンバー構成にあって、注文通りにクリールカイザーがハナを切る展開となったが、ある程度飛ばして消耗戦に持ち込むのではなく、マイペースの溜め逃げの形に。1000m通過は63秒0で、以降も12秒台半ばのラップが続いて馬群が団子状態になり、必然的に瞬発力勝負となった。

 この流れの中で、シュヴァルグランは中団外目のこれ以上ないと言えるポジション取り。どこからでも動ける態勢だった上に、仕掛けのタイミングも抜群であった。抜け出して、最後は後続に半馬身まで詰め寄られたものの、内容的には完勝と言えるだろう。中2週でのジャパンCを意識した余裕の仕上げだったことと、58キロを背負っていたことを考えても、ここでは地力が一枚上だったということであり、これは本番でも期待が持てそうだ。

シュヴァルグラン

抜群の仕掛けから地力を見せつけたシュヴァルグラン(緑帽)(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着アルバートは、勝ち馬を見る位置取りで運んだのはいいが、追い出されてからモタ付き気味で、最後の最後で脚を使ったとはいえ、脚が余っていた印象を受けた。今日のペースも向かなかったことは確かだが、もっと後ろの位置か、あるいは思い切って前で、という極端な競馬の方がいいかもしれない。

 3着ヴォルシェーブは、いつもよりは後ろの位置取りだったが、後方からでもうまく流れに乗って動いて行って、持てる力を発揮できたように思える。今の東京の馬場も合っている印象を受け、ゴール前こそ2着馬に差し返されたが、このあたりは経験の差。今後が楽しみになる内容であった。

 4着モンドインテロは、遅い流れでの団子状態が災いして、道中で馬場のいい外目に持ち出すことができなかったのが最大の敗因だろう。直線でも、やむを得ず内を突いて伸び切れなかったものだが、ロスを承知で外へ持ち出しても結果は変わらなかったはずだ。

 5着フェイムゲームは、勝負どころでポジションを上げられず、4コーナーでは最後方の位置。そこから外へ持ち出すことができなかったが、馬群を縫うように脚を伸ばし、最後も内目から目立つ脚を見せた。少しもったいない競馬となったが、力に衰えがないことは示したと言える。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。