サイレンススズカの背中を知る男が仕掛けた“優等生の競馬” エイシンヒカリ

【佐藤直文 先週のレース回顧】
エプソムカップは、エイシンヒカリが、まさかの溜め逃げで後続を振り切った。まだ課題が残る中で、求められる“結果”を引き出した武豊騎手会心の騎乗であった。

佐藤直文 レース回顧
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優等生の競馬で エイシンヒカリが鮮やかに 【エプソムカップ】

 私も含めて、大方の予想はエイシンヒカリがブンブン飛ばして逃げる展開だったはずだ。サイレンススズカの再来、という声もかかる快速中距離馬の出現を、ファンも心待ちにしていただろう。しかしながら、ハナは切ったものの、1000m通過59秒2という抑え気味の逃げ。レース後の武豊騎手の言葉を借りるまでもなく“優等生の競馬”であった。

 武豊騎手は今回が2度目の騎乗だったが、初騎乗だった前走とは違って、しっかりとこの馬を把握できていたように思う。何しろ、今回のテーマは、サイレンススズカ級の強さをアピールすることではなく、秋へ向けてキッチリと賞金を加算することであり、そのための最善策。サイレンススズカの背中を知る騎手だからこそ、こういう選択肢もあったということだろう。今日のようなレース運びができるなら、おそらく控えて差す競馬も可能であり、秋が本当に楽しみになったと言える。

優等生の競馬でエイシンヒカリが逃げ切り勝ち(撮影:日刊ゲンダイ)

優等生の競馬でエイシンヒカリが逃げ切り勝ち(撮影:日刊ゲンダイ)

 大方の予想を裏切ったと言えば、サトノアラジンのレース運びもそうであった。エイシンヒカリを見ながら好位からの競馬で、直線でもインに潜り込んで、一旦は捕らえるかの勢い。ただ、それが叶わなかったのは、直線半ばまでは外へモタれ気味だったエイシンが真っ直ぐに走ったことと、やはり自身1800mが微妙に長いためだろう。ルメール騎手も距離ロスを最小限に抑えた絶妙の騎乗であったが、今日のところは仕方がない。秋はマイル路線での大暴れに期待したい。

 ディサイファは、道中で脚を溜め、外を回って差す自分の競馬に徹したが、惜しむらくは道中のペースが遅かった。上位2頭より1キロ重い57キロもあってのこの着差は、負けて強しをアピールするものではある。フルーキーも同じ競馬で、直線でも巧く馬群を捌いて、らしい伸びを見せたものの、この流れで差し切れるのなら、とうの昔に重賞を勝てているはず。立ち回りという点でのランクアップが望まれる。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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