マイラプソディ敗戦はともかく 称賛したいルメールの判断力

佐藤直文 レース回顧
共同通信杯

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敵は前にあり 好アシストでダーリントンホール

 雨で渋った馬場を考慮しても、1000m通過63秒3は超の付くスローペースだったが、遅いからと言って早目に動いては猫の首に鈴を付けに行くようなもので、直線の長い東京ではなおさらだろう。ただ、時として、それが正解となることがあり、そのジョッキーの判断力に舌を巻くこともある。今回は、まさにそれを改めて実感させられる結果となった。

 ダーリントンホールは、序盤は中団で折り合いに重視し、前に2番人気馬、後ろに1番人気馬という有力どころを見ながらの位置取りだったが、3コーナーを過ぎてからスッとポジションを上げて、4コーナーでは逃げていた馬の内に併せて行った。ペースの遅さゆえに、敵は前にあり、と踏んで動いたルメール騎手のこの判断こそが、最終的にはハナ差の勝利を導いたと言える。父ニューアプローチは、ガリレオ、サドラーズウェルズと遡る欧州の重厚な血脈であり、今日のような馬場も合っていたと思えるが、ここまで敗れた2戦はともにレース運びや状態面の問題で力を出し切れなかったものであり、クラシック本番でも期待をかけていいはずだ。

ダーリントンホール

叩き合いを制したダーリントンホール(右)がクラシックに名乗り(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着ビターエンダーは、押し出せるようにハナへ立ったが、馬場の重いインを避けた絶妙の逃げだったか。結果的に、直線では勝ち馬にインをすくわれる形となったが、最後まで抵抗できたのは、道中でリラックスして走れた運べたことと馬場の適性の高さだったろう。マイナス10キロの馬体もちょうどいい感を受け、馬体を維持できるようなら、この先も楽しみである。

 3着フィリオアレグロは、対照的にプラス18キロの馬体。成長分もあっただろうが、やはり緩めの作りではあったか。序盤に力む面を見せるなど若さも覗かせていたが、それでいて3着争いを制したあたりは素質の高さだろう。上位2頭には4馬身もの水を開けられたが、これがけっして能力差ではない。

 4着マイラプソディは、馬を見るまでは本番を見据えた仕上げかとも思っていたが、状態自体は良く映った。ライバルたちを前に見る形で、おそらくいつでも動ける態勢だったはずだが、早目に動いた勝ち馬との差を最後まで詰められなかったあたり、斤量や馬場だけに敗因を求めることはできないだろう。

 5着ココロノトウダイは、馬場や展開を味方に付け、直線半ばで上位2頭には一気に離されたものの、最後まで渋太く粘り込んだ形。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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