溜めに溜めてキンショーユキヒメ 鞍上の大記録達成にも拍手を

佐藤直文 レース回顧
福島牝馬S

流れがハマって初重賞 キンショーユキヒメ

 前走の中山牝馬Sと同じく、カワキタエンカが注文通りにハナを切ったが、けっしてマイペースではなく、後続に突かれ気味の逃げ。前半1000mは59秒0と、少し時計のかかる最終週の馬場としては速めの流れであった。

 キンショーユキヒメは、後方から自分の競馬に徹した形だったが、流れを味方に付けてものの見事にハマったもの。少し時計のかかる小回りコースというのも、メイショウサムソン産駒にとってはこの上ない舞台であり、持ち味を生かし切った鞍上の手綱捌きも光った。その秋山騎手は、これで史上5人目のJRA全10場重賞制覇となったが、コツコツと積み上げての大記録達成に、心から拍手を贈りたい。

 2着カワキタエンカは、楽な逃げを打てなかった上に、直線で一旦は3着馬に交わされながら差し返したあたり、前走がけっして恵まれた勝利ではなかったことを示したと言える。最後は外から勝ち馬の強襲に遭ったが、これは仕方なく、負けて強しの内容だった。

 3着デンコウアンジュは、小回りを意識してか早目に動いて直線で一旦は抜け出すかの構え。最後は早目に動いたことと、ベストよりも1ハロン距離が長かった分だけ伸び負けたが、これまた勝ち馬と同じメイショウサムソン産駒で、小回りならこの距離でも戦えることを示した形だ。

 4着トーセンビクトリーは、自在性のある脚質とはいえ、やはり今日のように最初からポジションを取りに行くと、威力のある決め手も使えない。もっとジックリ運ぶ方がいいのではないかと思える。

 5着レイホーロマンスは、馬自身の行きっぷりも良かったのだろうが、好位のインで立ち回って脚も溜まっていた。ただ、4コーナーでゴチャついたのが痛かった。結果的には、後方待機で勝ち馬のような競馬ができていれば、と惜しまれる。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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