GI級の走りで勝利したマカヒキは、父ディープを超えるか

佐藤直文 レース回顧
弥生賞

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“3頭立て”も内容はGIレベル マカヒキが無傷で本番へ

 先週の中山は、土日ともに前年比大幅アップの入場人員であったが、もちろん、その立役者は16年ぶりの新人女性ジョッキーとなった藤田菜七子騎手であろう。初騎乗となった土曜2Rのゴール前などは、まさに重賞並みの大歓声が起こっていた。ただ、先週も書いたように、中山記念のドゥラメンテのようなスターホースの走りが、本来の競馬人気を盛り上げるもの。そういう意味では、日曜の弥生賞も、馬券的には面白味はなくても、次代のスターホースたちの走りを十分に堪能できたのではないかと思う。菜七子目当てに訪れたファンにも、競馬の醍醐味は伝わったはずだ。

 実質“3頭立て”という下馬評通りの結果となったのは、雨の予報もあった中で絶好の馬場をキープできたことと、前半1000mが59秒5という速いラップで各馬が力を出し切れる流れになったためであろう。レース史上初めて2分を切る決着となったのも、それだけのハイレベルな戦いであったことを示すものだ。

 マカヒキは、スタートこそ遅めだったが、慌てることなく後方から自分の競馬ができていた。勝負どころから外を回って追い上げて4角大外、という形も、ルメール騎手が土曜日から再三試していて、それで差し切れる馬場と確信していたと思える。着差はクビ差でも、手応えには余裕があった完勝であり、反応の良さや操縦性もアピールするGI級の走りであった。ここまでは父ディープインパクトと同じ歩みだが、若駒Sの上がり3ハロンが父を大きく上回る数字であり、そして今回は、上がりのみならず走破タイムも上回った。父に並ぶのか、そして父を超えるのか。ルメール騎手が、サトノダイヤモンドとこの馬のどちらを選ぶのかも含めて、本番が本当に楽しみになった。

マカヒキ

ゴール前でリオンディーズを捕えたマカヒキ(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着リオンディーズは、今回に限っては完敗であるが、おそらく今回のデキがマカヒキの8.5分くらいに対して、7.5分くらいと思えただけに、互角のデキなら、と考えていいだろう。しかも、好位で運んで早目先頭という競馬ができたのであれば、多頭数となる本番でも力を余すことなく発揮できる可能性が高い。負けはしたが、勝ち馬と同タイムで2分を切ったのであれば、2歳王者に恥じない走りであり、本番での逆転も十分可能だ。

 3着エアスピネルは、過去3戦ともマイル戦だったこともあり、序盤は行きたがる仕草。折り合ってからは、リオンディーズを見る形で運んだが、その差を詰めることができず、ラストでは突き放されてしまった。距離自体は大丈夫と思えたが、現状での力の差が出たと言える。武豊騎手レース後のコメントにもあったように、通常の年なら勝っていいレベルの走りなのだが、正攻法の勝負では本番での逆転も厳しいだろう。

 以下は5馬身差が開いて、4着タイセイサミット、5着アドマイヤエイカンと入線したが、この2頭も2分1秒ちょっとという通常の年なら勝ち負けになる時計で走っている。上位3頭のレベルが高過ぎただけであり、いずれは重賞を勝てるレベルの走りだったように思える。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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