優馬編集長 上田一幸・思い出のダービー　1996年第63回 優勝馬フサイチコンコルド

人気薄だった理由は…

　いくら実績不足だったといっても、人気がなさすぎたことは そこまでの経緯にあった。本来 ３戦目はダービーではなく、ダービーのトライアルレース（プリンシパルＳ）に出走する予定だったフサイチコンコルドは、東京へ輸送後に熱発して同レースを回避してしまう。そして３週後、ダービー出走のために再び輸送した後に またもや熱発。調教師が出走の取り消しを考えたほどだったと聞く。これが無敗馬の人気を下降させた。ちなみにフサイチコンコルドは熱発の他に、朝よりも日中の体温が低い逆体温など、デビュー前から極めて体質の弱い馬だった。ノーザンダンサー３×３のインブリードという血脈が影響していたのだろうか…

　それでもフサイチコンコルドはダービーを制した。未知の魅力に惹かれることが多い私は ”無敗馬の単勝が30倍もつくのか。それなら買ってみよう” と、単勝馬券を買ったことを記憶している。ん、30倍？ そうだ、思い出した。その日はダービーの馬券を午前中に買ったのだった。購入した時は実際の配当金＝27 .6倍ではなく、30倍あったはず。早めに馬券を購入したのは、その日が従兄弟の結婚式で 直前に買えない状況になったら困るからだった。そうだ、そうだ。これに限らず、競馬をやっていると、レースと記念日がリンクして日記がいらない。

　持って生まれた素質だけでダービーを勝った天才肌、なんとも格好がいいフサイチコンコルドは、昨年の秋に天に召された。合掌。