【天皇賞・秋回顧】「4コーナー4秒差」の興奮 パンサラッサが今回のメンバーから逃げ切るには?

佐藤直文 レース回顧
天皇賞(秋)

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はるか先の目標に向かって イクイノックスの鬼脚が炸裂

 逃げた馬の1000m通過が57秒4という近年にないハイペースとなったが、2番手以下の馬たちにとっては平均以下のスローペース。4コーナー手前の残り600m地点でも後続に4秒近い差を広げて直線を向いた時点で、これはちょっと届かないのでは、と思えたが、逃げた2着馬の上がり3ハロンが36秒8に対して、勝ち馬は32秒7。1着馬と2着馬で上がりの差が4秒以上というレースなど、滅多に観られるものではない。

 イクイノックスは、中団で折り合いを付け、大逃げの展開にも惑わされることなく直線へ。スムーズに外へ持ち出されると、33秒台で上がった周囲の馬よりも一際鋭い伸びを見せ、一気に前を捉え切った。春と比べて馬体のみならず精神面でも大きく成長した姿を見せ付けた形だったが、それにしてもこれほどまでの鬼脚が使えるとは、想像以上の強さだった。

イクイノックス

鬼脚を繰り出した1番人気の3歳馬イクイノックスがGI初タイトルを獲得

 2着パンサラッサは、自分の持ち味を存分に生かし切った競馬だったが、やはりベストはドバイターフの1800m。国内にその距離のGIがあれば、これだけのメンバーが揃っても逃げ切れる馬だろう。

 3着ダノンベルーガは、道中は勝ち馬の後ろのポジションで運び、直線を向いてから馬群の内目に誘導された形。ただ、内の窮屈なところでは、これまでも存分に脚を使い切れなかった馬であり、今回も脚を余してしまった感を受けた。

 4着ジャックドールは、前走の札幌記念同様に好位で折り合いを付けての追走だったが、瞬発力勝負となっては分が悪い馬であり、早めに2着馬を追いかけて良かったかもしれない。

 5着シャフリヤールは、昨年のジャパンC時からプラス10キロの馬体は、やはり余裕残しの仕上げだったろう。次は大きく変わってくるはずだ。

 ジオグリフも、プラス14キロと体が絞り切れていなかった。気性面での成長も見られない走りで、そのあたりも今後の課題だろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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