なぜ「完敗」アーモンドアイ 本来の躍動感が見られず

佐藤直文 レース回顧
安田記念

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皇帝の呪縛を解けぬ先輩を尻目に グランアレグリア

 勝利ジョッキーインタビューで、試合後のボクサーのように右目を腫らした池添騎手の姿に驚かれた人も多かったろう。3コーナーで芝の塊が目を直撃し、軽い脳震盪を起こしながらも、馬を終始リラックスさせる走りで鮮やかにゴールに導いたもの。本人が“あれで力が抜けたのが良かったのかも”と振り返っていたのも、意外と的を射ているかもしれない。

 そのグランアレグリア。序盤は先行勢と後方待機勢の間でストレスのない追走ができ、鞍上のアクシデント後も全く馬に影響が見られないスムーズな走りだった。4コーナー手前で、外から仕掛けてきた馬と歩調を合わせると、直線で馬場の真ん中を力強く抜け出したもの。熱発でヴィクトリアマイルをパスしたものの、その影響どころか、むしろ馬体も増えて素晴らしい気配だったが、そこまで馬を作ったスタッフの力と、桜花賞馬としての資質の高さを改めて示した形だ。阪神カップや高松宮記念で短い距離の競馬を経験したことも、プラスに働いたと言えよう。

グランアレグリア

アーモンドアイの「8冠」を阻止したグランアレグリア

 2着アーモンドアイは、出遅れ自体は致命的なものではけっしてなかったが、苦もなく好位を追走できた前走とはまるで違う競馬になり、馬群に包まれる形となった。直線を向き、前の進路が開いて鞍上からゴーサインが出た後に、本来の躍動感が見られなかったのも、前走のようなリラックスした走りができていなかったためだろう。それでも2着を確保したあたりは能力なのだが、純粋なマイル適性では歳下の桜花賞馬の方が勝っていたとも言える。

 3着インディチャンプは、道中は内々をロスなく追走し、直線でも巧く捌いて先に抜けた勝ち馬を追いかけたもの。マイルでは実に安定して力を発揮できる馬だが、今日のところは上位2頭が強かったと言うしかない。

 4着ノームコアは、決め撃ちとも言える直線勝負で、ヴィクトリアマイルでは4馬身以上も差を付けられたアーモンドアイに肉薄したもの。これまた相手が強かっただけで、東京マイルはすこぶる走る馬だ。

 5着ケイアイノーテックは、後方から外を回って早めに仕掛けた分、直線では伸び負けしてしまったが、それでも掲示板を確保したのだから、不振脱出のきっかけは掴めたように思う。

 ダノンキングリーは、前を見る形でスムーズな追走ができていたが、直線で全く伸びずに自身初めて掲示板を外したもの。ここまで負ける馬ではなく、敗因もちょっと掴めない。ダノンプレミアムも、不利のあった昨年に次いでの大敗となったが、こちらは海外遠征帰りで体調が万全ではなかったか。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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