プラン通りのキセキに… 「恐るべし」25歳とリスグラシュー最大の勝因

佐藤直文 レース回顧
宝塚記念

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あっと驚く先行策 レーン&リスグラシュー

 宝塚記念は、ペースや馬場状態にかかわらず上がりを要すレースであり、昨年までの過去10年でレースの上がり3ハロンが35秒を切ったことが一度もない。GIとしては稀有な例と言えるが、問われるのは瞬発力よりも、2200mという距離以上のスタミナや持続力のあるスピードである。今年は1000m通過が60秒0のスローな流れに加えて、実力馬が揃って前々で運ぶ展開。中団以降でジックリと脚を溜めていた馬に出番がなかったのも当然だろう。

 リスグラシューは、大外枠から好スタートを切り、内の出方を窺いながら、飛ばして行く馬がいないとみるや、スッと2番手で折り合う形。絶妙のペースで逃げた馬を巧く利用して流れに乗り、直線では残り1ハロンで先頭に立って抜け出す完勝劇だった。おそらく今までのレースビデオを観た上でイメージを掴んでのテン乗りだったはずだが、臨機応変に対応して今までにない強さを引き出したダミアン・レーン。まさに恐るべし25歳である。牝馬ながら海外遠征を挟みつつ好走を続けてきたタフさも、この舞台ででは最大限に生きたと言えるが、やはり何と言っても今日のところは鞍上の好判断が最大の勝因だろう。

リスグラシュー

2着キセキに最後は3馬身の差をつけたリスグラシュー(桃帽)(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着キセキは、スタートダッシュは一息だったが、最内枠を利してハナに立ち、前述したスローペースに持ち込んだ。そして、1000m通過以降にジワっとペースを上げ、後続にも脚を使わせる形で、これはレースプラン通りの完璧な逃げだったろう。これで負けたのなら相手が悪かっただけで、この馬の力は出し切れたように思う。

 3着スワーヴリチャードは、序盤は少し力み気味で鞍上が宥めながらの好位追走。前を行く勝ち馬の手応えの良さとは対照的に、3~4コーナーでの反応が一息でスッと離されてしまったが、このメンバーで3着なら、これまた力は出し切れたのではないか。

 4着アルアインは、好位のインをロスなく立ち回ったのは前走と同じパターンだったが、その大阪杯では直線を向くまでジッとしていたのに対し、今回は逃げ馬のペースアップに対応せざるを得なかったことで脚を使ってしまった。2200mの距離も気持ち長いと言えただろう。

 5着レイデオロは、4着馬の直後のポジションで勝負どころでも動くに動けない位置取り。直線ではそのままインをついたが、前が残る流れもあったとはいえ、らしい伸びがなかった。これまでの敗因となったテンションなどの問題はなかったが、展開に加えて本来のデキにもなかったか。

 エタリオウは、後方から運んで3コーナー過ぎから進出を図ったが、前のペースもアップしたことでポジションを上げられず、直線を向いたところではすでに手応えがなかった。鞍上が何かやってくれるのでは、という期待もあったが、天皇賞激走の疲労が残っていたかもしれない。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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