池添の「思い結実」ソングライン 8着イルーシヴパンサーは“弱み”露呈

佐藤直文 レース回顧
安田記念

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最高の騎乗に導かれGI初制覇 ソングライン

 前半3ハロンのラップが34秒7。同じラップだった8レースの1勝クラスは、ミドルペースで1分32秒8の決着だったが、GIとしては明らかなスローペースであり、レースの上がりも33秒6という究極の瞬発力勝負となった。ひと塊りの馬群が直線を向いてヨーイドン、という形では、鞍上がどれだけスムーズに脚を使わせるかということも問われる一戦となったように思う。

 ソングラインは、枠なりに中団の外を回っての追走となったが、内に入れば直線での進路取りが難しくなり、これより外を回るのもロスとなるという意味では、ギリギリで絶好のポジション取りだったか。直線を向いた時点で前に何も障壁がない状況を作り出したことにより、力をフルに発揮できた形だ。思えば1年前のNHKマイルCでは最後まで真っ直ぐ走っていればのハナ差負け、前走のヴィクトリアマイルでも内でゴチャつく不利があり、ともに鞍上の池添騎手にとって悔いの残る一戦。それだけに何とかこの東京マイルでGIを、との思いも人一倍強かったはずであり、その思いが結実した最高の騎乗であった。

ソングライン

激戦を制した4番人気の牝馬ソングラインがGI初勝利

 2着シュネルマイスターは、4コーナーを向いた時点で番手こそ勝ち馬とほぼ同じであったが、こちらは対照的に前方が馬群となった厳しい位置。満足に脚を使えたのも残り1ハロンを切ってからだったが、それでここまで来たのは地力の高さに他ならない。けっして万全だったとは言えなかった体調面を考えても、力は十分に示したと言える。

 3着サリオスは、大幅なマイナス体重だったが、雰囲気はけっして悪くなく、勝ち馬同様に外を回る形でスムーズに流れに乗れていた。今回も含めてしばらくはいい話も聞こえてこなかった馬だが、久々に本来の走りができたように思う。

 4着セリフォスは、前に勝ち馬をみる形でこれまたスムーズな競馬ができたが、その勝ち馬との差を最後まで詰められないままのゴール。このあたりは現状の力の差とも言えたが、来年は主役を演じる可能性が十分あるはずだ。

 5着ファインルージュは、好位で運べてはいたものの、結果的には馬場のいい外へ持ち出せるシーンがなかった。

 イルーシヴパンサーは、今日の流れでは位置取りの悪さが全て。自分で競馬を作れない弱みは、これまでは能力で克服できていたものの、GIの舞台ではそう甘くはなかった。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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