モレイラ騎手のしたたかな計算 ナックビーナスが完勝で秋へ

佐藤直文 レース回顧
キーンランドC

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鞍上ともに遂に手にした重賞タイトル ナックビーナス

 稍重発表ながら1分9秒4。乾いていればソコソコに速い時計が出るものの、ひと雨降ると途端に時計のかかる札幌の洋芝らしい決着タイムだったが、上がりの要する馬場での戦い方を熟知した勝ち馬の鞍上の巧さには、改めて舌を巻く結果となった。

 ナックビーナスは、これまで重賞で再三の好走がありながら何故か勝てなかった。その最たる理由として挙げられるのは、抜け出してソラを使うなどの気性面の問題だったが、目標となるリスクを承知で逃げの手を打つことは、現状打破の選択肢としてはあったはずだ。行きたい馬は他にもいて、テンの3ハロンは33秒7と馬場を考えれば速いペースではあったが、上り3ハロンで35秒7を要しても、迫ってくる馬はおろか直線で突き放したのだから、これは前述した通り、モレイラ騎手のしたたかな計算によるものだった。GIの舞台でも同じ競馬を望むのは厳しいとはいえ、スプリント戦では大差と言える2着に2馬身半差の完勝は、確かな能力を示すもの。胸を張って臨めるはずだ。

 2着ダノンスマッシュは、抜群の手応えで先行して序盤は勝ち馬にプレッシャーをかけ、一旦息を入れて直線では懸命に前を追ったもの。その差は詰まるどころか広げられたが、自分の競馬ができたことで2着を守ることができた。年齢的にも、これからのスプリント路線を担う存在となるかもしれない。

 3着ペイシャフェリシタは、内枠を利して好位のインで流れに乗り、全くロスのない競馬で直線でも際どい2着争いを演じた形。時計のかかる馬場も味方に、完璧なレース運びでの好走と言える。

 4着キャンベルジュニアは、中団で巧く流れに乗れていたが、3~4コーナーから動いて行った分、最後は前の馬と同じ脚色になってしまった。ただ、早仕掛けであっても、直線だけでは届かない今日の流れでは仕方なく、初の1200m戦に対応できたことは、今後に繋がるはずだ。

 5着は同着。スターオブペルシャは、4コーナーでは圏外の位置取りだったが、馬群を縫うようによく脚を伸ばしたもの。レッツゴードンキは、後方から直線で外へ持ち出したものの、伸びはジリジリ。久々の分とも言えるが、年齢的な衰えの可能性もあるだろう。

 ムーンクエイクは、最後方から直線で内をついて、上がりは35秒1と最速だったが、数字ほどの目立つ伸びでもなかった。初の120mと58キロの斤量も応えたと言えるが、それ以上に小回りコースの適性がなかったように思える。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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