「恐れ入った」スミヨンの好判断 3着ラヴズは「正しかった」

佐藤直文 レース回顧
エリザベス女王杯

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父の背を知る鞍上が大仕事 ラッキーライラックが女王の座に返り咲く

 三度目の正直を狙ったクロコスミアの逃げは大方の予想通りではあったが、驚いたのが1番人気のラヴズオンリーユーが2番手で先行したことだろう。ただ、1000m通過が62秒8というスローでは、この戦法自体が誤りであったとは思えず、後方待機組や4コーナーで外を回る形では届かない流れであった。

 ラッキーライラックは、中団からの追走でこれ以上後ろからでは厳しいと言えるギリギリのポジションだったが、4コーナーで内が開いたと見るや、躊躇なく最内に進路を取ったスミヨン騎手の好判断が光った。上がり3ハロンは32秒8と、これだけのキレ味を見せたのはデビュー以来初めてだったが、進路取りも含めてそれを引き出した鞍上の腕には恐れ入った。過去4勝はいずれもマイル戦でのものだったが、デビューから3歳春までのものでもあり、今ならこの位の距離が合っている馬。今後は牝馬同士の枠にとどまることなく、大舞台での活躍が期待できよう。

ラッキーライラック

一昨年の2歳女王ラッキーライラックが復活の戴冠(撮影:日刊ゲンダイ)

 2着クロコスミアは、単騎で行けた上に、同様にレースを作った昨年よりも遅いペースでの逃げ。さらには、残り半マイルからペースを上げて後続との差も広げる完璧なレース運びだったが、勝ち馬にあの脚を使われては仕方なかった。3着馬の猛追も凌いだあたり、胸を張れる3年連続2着だろう。

 3着ラヴズオンリーユーは、前述したように戦法自体は正しかったと言えるし、プラス16キロの馬体も成長分だったろう。ただ、追われての反応が本来のものではなかったあたりが久々の分だったか。いずれにしろ評価の下がる負け方ではなく、このあと順調なら、次はワンランク上の走りが期待できるはずだ。

 4着センテリュオは、スローペースを見越して早目に3番手に上がって流れに乗り、直線でもアワヤのシーンを作った。この相手にこれだけ走れば、牝馬GIIIなら楽に勝てるレベルだろう。

 5着クロノジェネシスは、4コーナーでは勝ち馬のすぐ前のポジションで、そこから勝ち馬の進路を選択していればあるいは、とも思えたが、もうワンパンチの脚が使えなかったあたり、秋華賞の疲労も少し残っていたか。

 スカーレットカラーは、久々だった前走からの中3週でプラス14キロというのは、明らかに楽をさせた証拠。前走のような脚を使えなかったのも、そのためだろう。

佐藤直文

筆者:


1963年、愛媛県生まれ。大学卒業後に入社し、当時(1馬)の看板評論家であった清水成駿に師事。坂路担当の調教班として馬の状態を自らの眼で確かめるとともに、独自の視点から発掘した穴馬を狙い撃つ予想スタイル。現、ラジオ日本、グリーンチャンネル解説者。

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